・・・富士登山の続き・・・。
本八合目出発!・・・そして、しばらく本八合目が延々と続く・・・2 人には、すぐに離され・・・例のように、歩いては座り込む歩いては座り込む歩いては座り込む歩いては座り込む・・・。ふと気づいた、そういや俺、登り始め てからココまで、全く便所行ってねぇ・・・今になってメッチャしたくなってきた・・・と上を見る。
はるか上空に鳥居が見えます・・・これまでも、いくつか鳥居を見てきたから分かる。きっと、その近所には山小屋があるさ・・・でも、見渡しても、それらしいものが・・・無い。それでも、良く見ると、その付近の岩場の影に何らかの屋根が見える・・・アレだ!
便所が見えて、目標が見えてしまうと、油断してしまって、一段と尿意が厳しくなります。しかし、体は言う事を聞かない・・・苦しい呼吸と迫りくる 尿意・・・つらさ倍増ったらありゃしない。のどは渇くけど、ションベンむぐれるから飲めない・・・ってか、リュックから出して飲む気力も体力も無い。ある のは・・・ションベンがしたい・・・の本能のみ。
また、しばらく歩き続ける。と、座り込んで辺りを見回す・・・そういや、さっき見た便所ってこの辺じゃ・・・屋根が見える。が、なぜか岩に覆われている・・・どこから入るのだろう?
超ショック!どうやらココは便所では無かった模様、何かの小屋の跡地なのだろうか・・・?と、そんな場合じゃないんだよ!俺のこの気持ちどうす りゃいいんだょ!?気持ちが焦る!上を見上げる、頂上っぽい所が見えてきているが、俺のコレまでを考えると1 時間はかかるな・・・ホント目の前、元気であれば5 分ぐらいで行けるんじゃないかぐらいの距離・・・俺には遥か遠いよママン。
かと言って・・・と下を見る。人が次々と登ってくる、まるで昔話「蜘蛛の糸」さながらの亡者が次々と這い上がってくるがごとく・・・や、やめろ! くるな!・・・と、その亡者どもを蹴飛ばして、山道がガラッと崩れて、俺ごと下の山小屋に転げ落ちたい気分。だけど、カンダタになるのだけはゴメン だ・・・下の山小屋まで降りてションベンするのはいいが、ココまで来た辛さを考えると、もうイヤだぁ!イヤなんだぁ!
南無・・・なんか悟りを開いた。そうだ、山頂へ行こう!・・・歩いては座り込む、軽く寝て吐きそうになる、油断してションベンむぐしそう、歩いて は座り込む、軽く寝て吐きそうになる、油断してションベンむぐしそう、歩いては座り込む、軽く寝て吐きそうになる、油断してションベンむぐしそう・・・何 が俺をそうさせるのか分からんくらい、延々と登ります。俺、死んでもおかしくねぇんじゃねー?ってぐらい、鼓動が激しいんです。
と、およそ頂上らしい所へと続く、最後の階段が目に入りました。ラストスパート・・・と思う前に体は動いていました。そして、その階段を勢いに任 せて登りきったその先に、2 人のうちの1 人がいましたよ。そして開口一番、余裕そうだね!と俺に言うではないか。はぁ?となりますよそりゃ。余裕だったら、もうとっくに下山してるわぃ!・・・と の気持ちを押さえつつ、ココ頂上?と聞いてみると、そうだよ!の言葉とともに指を指す。
と、指差したほうを見てみると・・・富士山頂上・・・の文字が入った石碑が。フッと、全身の力が抜ける・・・どころか、なぜか一気に元気がみな ぎってきた!やったー!ついにキター!・・・2 人は、俺よりも30 分以上前に着いていたみたい。すでに、休憩しきって体も冷えているみたい・・・それでも、さすがに俺も休ませてくれと、山小屋の一角に座って、休憩タイ ム。
まずは、すっかり忘れてた便所に行った・・・1 回200 円・・・日本一高い所でするションベンは、また格別ですな♪次に、山頂にある御宮さんで、金剛杖に最後の朱印を押してもらう・・・焼印とは違い、朱色の押 印で1 回300 円。あとは、山頂と刺繍の入った御守りを数個あさったり、山小屋周辺ウスラカスラしたり・・・一体、今までのドコにそんな体力があったんだってぐらい、超 ウスラカスラ・・・富士山頂なのに自動販売機があってスゲー!と感心しつつ、高ぇー!とか思って、わざわざ写真撮ったり♪そして、山頂からの景色を撮りた かったけど、超濃霧だったので、全く何も見えず。
さて、かれこれ俺が着いてから30 分は経っただろうか・・・呼吸も落ち着いてきたし、そろそろ出発しようか?と、山小屋から外に出てみると、また雨。晴れる事は無いにしても、雨は降ったり上がったり暴風雨だったり・・・山の天気と妻の機嫌は変わりやすいんです。
で、山頂からは2 つのルートがあります。下山道と山頂の火口周りを回る「小鉢巡り」というトレッキングルート。その小鉢めぐりの方には、金名水とか銀名水って言う、富士山 頂に湧く湧水があったり、富士山頂って言う消印を押してくれる郵便局があったりして、ぜひ行きたい気持ちは満々なんだけども、体が拒否します。豪雨だし、 濃霧で景色は楽しめないし、まず俺の体力が持たん・・・1 周1 時間半のコースと言っても、今の俺には倍はかかるだろう・・・と、心では泣く泣くあきらめた。で、2 人のうちの1 人の、体力が有り余ってすごい行きたそうな奴に、また今度、天気のいい時に着たら回んべ!と言って、言い聞かせた。・・・ホントは、もう絶対こねえ!と思 いながら・・・。
さて、登山道とは別ルートになっている、下山専用の下山道に入る。山頂に来る時に登った、つづら折りになっている坂に似た所を、延々と下りるだ け・・・超楽!スゲー楽しい!ヤッホー!今度ばかりは、2 人を尻目に先頭で突っ走ります!イェイ!と目の前に、本八号目っぽい所が見えてきた!早っ!・・・ほぼ、あっという間にココまで下山。
・・・でも、さすがにココまで、コレだけ勢いつけて下ってくると、足にくるねぇ・・・登ってくる時とは、また違った痛みが足を蝕み始めました。登 る時は、筋肉を相当に使って歩くので、足もさることながら呼吸が一番のツライ所。しかし、この下りは逆で、ほぼ筋肉は使わずに惰性で歩くようなものなの で、全く呼吸は乱れないんだけども、その全体重が常に膝にかかるため、まず左ひざが悲鳴を上げた・・・。
言い方が正しいのか分からんが、例えて言うなら膝の軟骨がグイグイ押されて潰される感じです。膝の皿が取れそうな、これ以上、圧力がかかったらポォーン!と膝が吹っ飛びそうに熱を持っています。
・・・ここからが生き地獄でした。天気は豪雨、見渡せる限り延々と続く単調な道、山小屋も何も無い・・・耐えられず道端に座り込む。2 人には先に行っててもいいよと言ったんだけども、置いてっても多分ダメそうだから着いてくよとの事。後から後から来る人は、元気に楽しそうにホイホイと 下って行く・・・辛そうなのは俺だけ。気力を振り絞って歩く始める・・・左膝をかばうように歩いていたら・・・右膝からも悲鳴が上がった・・・。
たまらず座り込む、相変わらずの雨。何で他の人は、何事もなくスイスイ歩くのに、俺だけ、こんなに辛いんだ?何が違う?・・・見れば、小学生ぐら いの小ぃちゃな子までもが俺の横を通り過ぎて下っていく・・・クソッ!何でこんなに足が痛ぇんだ。登りの時は、呼吸が辛かったから、休憩を取って呼吸を整 えては登るの繰り返しで、何とかイケた。でも、今の下りは、どうだ?呼吸は全く辛くない、筋肉は張らない・・・足の膝・・・関節が、骨と骨がぶつかって痛 い。ちょっとやそっと休んだ所で、コレばかりはどうにもならない・・・。
登りよりツライ・・・こう思うのは俺だけか?たぶん、そうだろうな。だって、みんな楽しそうに駆け下りて行くもん。下を見下ろす、延々とつづら折 の坂が続く・・・今の、この足でアレを行くのは不可能だ・・・足が死ぬ。99% の本気と1% の冗談で、そう思った。なんと起伏の無い道だろう・・・泣いている左膝右膝をかばいながら歩いていたら、今度は右尻ぐらいの足のおおもとの関節がゴリッ! と泣き始めた。俺自身は、もう泣いています・・・ってか、相変わらず2 人には俺のペースに合わせてもらって、後ろをついてきてもらっているので、涙は見せられず、むしろ自分の不甲斐なさに憤慨すらしていました。・・・でも、 なんでコイツ一人で怒ってんだ?って思われんのもイヤだから、ポーカーフェイスで。
理想の下山時間は3 時間とかあったけども、かれこれ3 時間は歩いただろうか・・・まだ、七合目すら届きません・・・真下に見えるんだけどね、七合目のポイントが。・・・で、なんとか着た七合目!唯一の便所ポ イントです・・・が、俺はそれどころではありません。ゴメンなさいとばかりに、完全にダウンしました・・・。
と、30 分ぐらい寝たり起きたり吐きそうになったりを繰り返しただろうか・・・俺の他にも、周りに休憩している人がたくさんいる中で、2 人も眠りコケていました。みんな、お疲れなんです。
で、2 人が目を覚ましたのを見計らって、そろそろ行こうかと目で合図を送る。七合目に着く少しぐらい前から、見るに見かねた2 人で、代わる代わる俺の荷物を持ってくれているのです。俺は逆にステッキも預けられて、金剛杖とステッキを両手に持って、さながら松葉杖をついたケガ人の ように必死で山を下っているわけです。ホント文字通り必死です。
さて、この辺りから下山道も様子が変わってきて、草木も生えてくるようになって来て、気温も上がってきます。太陽は拝めずとも、雨はすっかり上が りました。だいぶ蒸してきますが、カッパは脱げません・・・また雨が降るかもしれないし、何よりも、そんな気力ありません。ある気力は、歩くことのみに使 いたい・・・足の痛みをごまかしごまかし、座って休んで、若干鎮痛しては歩き始めての繰り返しで、その様は登りよりヒドイです。
やがて道も下りだけではなく、平地や登りなんかも若干混じってきて、そしたら登り道が楽で楽で♪そしてまた、いつの間にか下ったりすると、膝がその衝撃を感知して、また下りかよ!と思ったり。・・・下り道、大っ嫌い!・・・。
そして、ついに六合目付近まできて、登山道との合流ポイントに来た。新たな登山者が、頂上を目指して歩いて行くのを・・・やめとけ・・・の思いで すれ違いざまに見送りつつ、俺は俺の目標である五合目をめざす。・・・ふと見ると、山を登る人と下る人の違いに気づいた。これから登る人は、元気と希望に 満ち溢れ、装いも小ギレイで光っている・・・一方で、下ってきた人は俺も含めて、人生に疲れたような、疲労こんぱいで、装いも薄汚れて、小ギタナイったら ありゃしない・・・笑ってしまうぐらい見た目で分かる。・・・山はコレほどまでに人を廃にしてしまうのか・・・。
六合目を過ぎても、登る時は、ほぼ一瞬と感じられた五合目までの距離も、下る今となっては超長い・・・一体いつになったら着くんだ。すれ違う人、 これから山を登る人・・・中には、Tシャツでサンダルのカップルまでいやがる・・・お前らバカだろ?それで山に登るつもりかい?じゃぁ、なんで俺は、こん な暑い中で、カッパ来て、こんなデカいリュック持って、必死に杖ついてるんだい?と、説教したくなったね、問い詰めたくなったね。あぁ・・・憤慨憤慨。
と、つ、ついに着きました、スタート地点となった五合目。
五合目を出発したのが、2006 年7 月15 日土曜日22 時47 分で、富士山頂に着いたのが、2006 年7 月16 日日曜日7 時30 分頃で、こうして五合目に着いたのが、2006 年7 月16 日日曜日12 時30 分頃でした。登り約8 時間半、で、山頂での休憩は抜いて、下り約4 時間半の、総計約13 時間半の長旅となりました!時計1 周以上ですよ。
そして、夜には考えられなかった混雑した五合目の中で、ちょいと座り込んで体力を回復して・・・さらに歩かなくちゃなんねぇ。・・・だって・・・ 車は、さらに下だもん・・・2km ぐらい(泣)。元気な人に車を持ってきてもらうったって、なんか五合目の駐車場はすでに満車で、長い行列ができているんだと。だから自分らでそこまで行く しかない。
と、視界にタクシーが飛び込みました!コレだ!とばかりに、タクシーに交渉・・・かくかくしかじか・・・そしたらタクシーの運ちゃんから仰天の一 言が・・・歩った方が早いよ・・・。ゴメン、マジで殺人を犯すところでした・・・でも幸い、そんな元気なくって殺せませんでした。まず普通に考えても、 2km は歩くより車の方が早ぇだろ?で、結局、乗車拒否かい?・・・あぁ、マジでイラつく。危うく、殺人行為、破壊行為をする所だったよ・・・今でも腹たつゎ。
で、この押さえられない気持ちを、かろうじて残った理性で何とか押さえつつ、もう1 台いたタクシーにも交渉開始。したら、さっきのバカタクシーよりは、まだ可愛げがあるものの、通常だと1 メーターかそこらぐらいで行けるぐらいの距離なのに、何かわけの分からない事を言い出して、2000 円とか言って最初に料金を吹っかけてきた。ぼったくりタクシーか?ココは外国か?
結局、憤慨しながら歩き始めた・・・アスファルトの道を延々下り続ける。2 人には離されて、相変わらず一人になって、両手に杖をつきながら、カッパ着て厚着して必死に歩く俺を、すれ違う観光客は怪訝そうな目で見る・・・そ、そん な目で俺を見ないでくれ・・・思うことしかできない。だって、ココロもカラダも辛いんだもん。
俺、黄色いカッパ着てたんだけども、道路を歩いて下って行くさなか、ふと気づくとカッパにびっしりと何か虫がついてる・・・ふ、俺を励ましてくれ るのは、お前たちだけかい?とか思いながら、払いのける気力すら失われた俺は、そいつらを引き連れて歩くしかない。・・・虫って黄色が好きなのね、そうい や俺の車も黄色だけども、確かに夏場は虫が、いっぱいたかるわ。
五合目出発から、さらに30 分経過しただろうか・・・ついに車に着きました。で、カッパを脱ぐけども、中に着た服は、雨だか汗だか分からないもので、ぐちゃぐちゃに濡れていました。 だから結局、下だけはカッパを着たまんま帰路に着きました。そして、早く風呂入りたい!早く着替えたい!早く寝たい!の欲求を満たす前に、自分らへの御褒 美として、早速、焼肉を食べました。・・・でも、一番ウマいのは、富士山で喰うチップスターですよ♪
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